本の蜜月

本のことを書きます。

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

選ばなかった冒険ー光の石の伝説ー/岡田淳 戦うということ、自分の役割

「もどろう。」 あかりの声が、やけにひびいた。ついさっきまでは運動場の体育の声や教室のざわめきがきこえていたはずなのに、あたりは静まりかえっていた。 「はやく、もどろう。」 ささやき声でもういちどいった。いってから、なぜかぞくっとした。ふたり…

天国旅行/三浦しをん テーマは「心中」 死と生の希望と絶望

他人からすると「どうして」と思えるようなことで、ひとは死を選ぶときもある。苦しみはいつでも、相対的なものではない。 あらすじ・紹介 ひとはどんなときに死を選ぶのだろう。「心中」をテーマに、さまざまな生と死の狭間を描いた7編。富士の樹海での奇妙…

人形館の殺人/綾辻行人 館シリーズ、異色の4作目

ふとまた、痺れるような感覚とともに、私は奇妙な失調感に引かれ…… ……赤い空 …………黒い、二つの …………長く伸びた…… …………………………影が あらすじ・紹介 長い療養が明けた飛龍想一は育ての母・沙和子とともに、父の遺した京都の館へと移り住む。屋敷は二人が暮らす…

東の海神 西の滄海/小野不由美 大国を築き上げる二人のはじまり

―—分かってしまった、と六太は眼を閉じる。 これが、王だ。 この男が雁州国を滅ぼし尽くす王なのだ。 あらすじ・紹介 日本で生まれた小松尚隆が延麒六太と誓約を交わし、雁国の新しい王となった頃、国はこれ以上ないほどに荒廃していた。その登極から二十年…

神様の罠/辻村深月ほか 人気作家6人のアンソロジー、コロナ禍を感じる作品も

辻村深月、乾くるみ、米村穂信、芦沢央、大山誠一郎、有栖川有栖の6名のアンソロジー。文庫オリジナル。 総評 どれも2020年以降の新しい作品。それぞれ独立した物語であまり共通点はなく、内容やトリックも、読んでいるときの気分や読後感もバラエティ豊かだ…