2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧
「もどろう。」 あかりの声が、やけにひびいた。ついさっきまでは運動場の体育の声や教室のざわめきがきこえていたはずなのに、あたりは静まりかえっていた。 「はやく、もどろう。」 ささやき声でもういちどいった。いってから、なぜかぞくっとした。ふたり…
他人からすると「どうして」と思えるようなことで、ひとは死を選ぶときもある。苦しみはいつでも、相対的なものではない。 あらすじ・紹介 ひとはどんなときに死を選ぶのだろう。「心中」をテーマに、さまざまな生と死の狭間を描いた7編。富士の樹海での奇妙…
ふとまた、痺れるような感覚とともに、私は奇妙な失調感に引かれ…… ……赤い空 …………黒い、二つの …………長く伸びた…… …………………………影が あらすじ・紹介 長い療養が明けた飛龍想一は育ての母・沙和子とともに、父の遺した京都の館へと移り住む。屋敷は二人が暮らす…
―—分かってしまった、と六太は眼を閉じる。 これが、王だ。 この男が雁州国を滅ぼし尽くす王なのだ。 あらすじ・紹介 日本で生まれた小松尚隆が延麒六太と誓約を交わし、雁国の新しい王となった頃、国はこれ以上ないほどに荒廃していた。その登極から二十年…
辻村深月、乾くるみ、米村穂信、芦沢央、大山誠一郎、有栖川有栖の6名のアンソロジー。文庫オリジナル。 総評 どれも2020年以降の新しい作品。それぞれ独立した物語であまり共通点はなく、内容やトリックも、読んでいるときの気分や読後感もバラエティ豊かだ…