本の蜜月

本のことを書きます。

ペツェッティーノ じぶんをみつけたぶぶんひんのはなし/レオ=レオニ

かれは ちいさくて きっとだれかの とるに たりない ぶぶんひんなんだと おもって いた。

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感想など

ずっと大事に手元に置いている絵本。自分に自信がないひと、自分のことを「とるに たりない」ものだと思っているひとにぜひ読んでもらいたい。

表紙右下の、小さなオレンジ色のまるっこい四角がペツェッティーノ。小さくてなんのとりえもない彼は、自分のことを誰かの「ぶぶんひん」なのだと思っている。彼の友達はみんなもっとカラフルで大きくて、なにか特技を持っているから、そうでない自分は何かの一部に違いないと思っているのだ。

ペツェッティーノは、自分が一体誰の部分品なのかを確かめに旅に出る。そして、自分は自分であるということに気づく。鮮やかで抽象的なコラージュ画とひらがなだけのやさしい文章に、すごく大切なことを感じる。どんなに小さくても、できることが無くても、決して誰かや何かの一部なんかではない。自分は自分なんだ、胸を張ろう。そんな風に思わせてくれる。

「私は私なんだ」と再確認したいとき、この絵本をひらく。何かに疲れてへこたれた自分を小さなペツェッティーノに重ね、一緒に船出する。強烈なマーブル模様の海を渡るページがお気に入りだ。そしてこなごなになった自分をきちんと拾い集めて、胸を張って帰る。自分をみつけた愛らしいオレンジ色が、ちっぽけな自分に少しだけ自信を分けてくれる。