本の蜜月

本のことを書きます。

博士の愛した数式/小川洋子 記憶を保てない博士と家政婦母子の友情

友愛数だ。滅多に存在しない組合せだよ。フェルマーだってデカルトだって、一組ずつしか見つけられなかった。神の計らいを受けた絆で結ばれ合った数字なんだ。美しいと思わないかい?君の誕生日と、僕の手首に刻まれた数字が、これほど見事なチェーンでつな…

風の万里 黎明の空/小野不由美 苦難を抱えた少女たちの成長

「人間って、不幸の競争をしてしまうわね。本当は死んでしまった人が一番可哀想なのに、誰かを哀れむと負けたような気がしてしまうの。自分が一番可哀想だって思うのは、自分が一番幸せだって思うことと同じくらい気持ちいいことなのかもしれない。自分を哀…

ペツェッティーノ じぶんをみつけたぶぶんひんのはなし/レオ=レオニ

かれは ちいさくて きっとだれかの とるに たりない ぶぶんひんなんだと おもって いた。 感想など ずっと大事に手元に置いている絵本。自分に自信がないひと、自分のことを「とるに たりない」ものだと思っているひとにぜひ読んでもらいたい。 表紙右下の、…

宿で死ぬ 旅泊ホラー傑作選/朝宮運河 編

ホテルや旅館を舞台にした旅泊ホラーを集めたアンソロジー。 あらすじ・紹介 ひっそりとたたずむ老舗の旅館や、どこか懐かしいグランド・ホテル―—。非日常に飛び込む旅の疲れを癒し、心やすらぐべき「宿」を舞台としたホラー作品は今も昔も人の心を惹きつけ…

夏の庭 The Friends/湯本香樹実 少年たちとおじいさんのひと夏の交流

死んでもいい、と思えるほどの何かを、いつかぼくはできるのだろうか。たとえやりとげることはできなくても、そんな何かを見つけたいとぼくは思った。そうでなくちゃ、なんのために生きてるんだ。 あらすじ 小学六年生の三人組、木元、河辺、山下は、町はず…

選ばなかった冒険ー光の石の伝説ー/岡田淳 戦うということ、自分の役割

「もどろう。」 あかりの声が、やけにひびいた。ついさっきまでは運動場の体育の声や教室のざわめきがきこえていたはずなのに、あたりは静まりかえっていた。 「はやく、もどろう。」 ささやき声でもういちどいった。いってから、なぜかぞくっとした。ふたり…

天国旅行/三浦しをん テーマは「心中」 死と生の希望と絶望

他人からすると「どうして」と思えるようなことで、ひとは死を選ぶときもある。苦しみはいつでも、相対的なものではない。 あらすじ・紹介 ひとはどんなときに死を選ぶのだろう。「心中」をテーマに、さまざまな生と死の狭間を描いた7編。富士の樹海での奇妙…

人形館の殺人/綾辻行人 館シリーズ、異色の4作目

ふとまた、痺れるような感覚とともに、私は奇妙な失調感に引かれ…… ……赤い空 …………黒い、二つの …………長く伸びた…… …………………………影が あらすじ・紹介 長い療養が明けた飛龍想一は育ての母・沙和子とともに、父の遺した京都の館へと移り住む。屋敷は二人が暮らす…

東の海神 西の滄海/小野不由美 大国を築き上げる二人のはじまり

―—分かってしまった、と六太は眼を閉じる。 これが、王だ。 この男が雁州国を滅ぼし尽くす王なのだ。 あらすじ・紹介 日本で生まれた小松尚隆が延麒六太と誓約を交わし、雁国の新しい王となった頃、国はこれ以上ないほどに荒廃していた。その登極から二十年…

神様の罠/辻村深月ほか 人気作家6人のアンソロジー、コロナ禍を感じる作品も

辻村深月、乾くるみ、米村穂信、芦沢央、大山誠一郎、有栖川有栖の6名のアンソロジー。文庫オリジナル。 総評 どれも2020年以降の新しい作品。それぞれ独立した物語であまり共通点はなく、内容やトリックも、読んでいるときの気分や読後感もバラエティ豊かだ…

その日のまえに/重松清 命を考え、心温まり、泣ける連作短編集

僕たちはいつも手をつないで歩いていた。生活に余裕はなく、将来の展望もほとんど見えていなかったけれど、僕たちはまだ若かった。喧嘩をしても、仲直りする時間はいくらでもあった。 おい、あと十八年たったら、おまえは手をつなぐ相手をうしなってしまうん…

迷路館の殺人/綾辻行人 閉ざされた迷路の館の連続殺人、その驚きの真相

反響する自分自身の靴音に追われるように、足早になる。南へ戻る直線の突き当たりでまた立ち止まり、耳を澄ます。——静寂。 どうしても、何者かが今この同じ迷路の中にいるような感覚が消えないのだった。自分が歩くとその者も歩き出す。自分が立ち止まるとそ…

ヒトごろし/京極夏彦 人を殺したい、異端の土方歳三小説

歳三の眼の中で、夜空に噴き上がる火の粉が青空に散じる血飛沫に変じた。 姉と見た。 初めて人が死ぬのを見た、あの日からずっと——。 ――俺は人殺しだ。 あらすじ・紹介 幼き日に見た、青空に上がる真っ赤な血柱。その光景に魅せられて、土方歳三は人を殺した…

風の海 迷宮の岸/小野不由美 いとけない少年は責務を果たせるか

(ぼくは人ではない) 麒麟であるということの確信。 (本当に、人ではなかったんだ……) あらすじ・紹介 十二の国からなるこちらの世界では、神獣・麒麟が天命を受けて王を選ぶ。十二国のひとつ、戴国の麒麟である戴麒は生まれる前に〈触〉という天災によっ…

きみはポラリス/三浦しをん 苦手な人にこそ勧めたい恋愛短編集

言葉で明確に定義できるものでも、形としてこれがそうだと示せるものでもないのに、ひとは生まれながらにして恋を恋だと知っている。 あらすじ・紹介 誰かが誰かに向ける強い想い。誰かの存在が、人生を導く星となること。恋愛とひとくくりに表現するにはあ…

予言の島/澤村伊智 再読必至のホラーミステリー

変だ、おかしいとわかってても切り捨てられない言葉。 振り払いたいのに振り払えない、目に見えない力。それが呪いよ。 あらすじ・紹介 瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が、二十年後に《霊魂六つが冥府へ堕つる》という予言を…

水車館の殺人/綾辻行人 ゴシック風な嵐の館の王道ミステリ

ごとん、ごとん…… 重く響く回転音が、水煙とともにそれを巻き上げ、掬い上げた。 あらすじ・紹介 岡山県の山奥に建つ、三連水車を備えた古城のような館・水車館。車椅子の当主、藤沼紀一は仮面で顔を隠し、幼妻や僅かな使用人たちとひっそり暮らしている。先…

月の影 影の海/小野不由美 異世界の厳しい現実

——生き延びる。 生き延びて、必ず帰る。それだけが陽子に許された望みだった。 あらすじ・紹介 他人の目を気にしてばかりいる平凡な女子高生・陽子のもとに突然ケイキと名乗る男が現れる。彼は陽子を主と呼び、跪く。同時に現れた異形の獣たちからわけもわか…

魔性の子/小野不由美 少年に付き纏う惨劇

人は、人であること自体がこんなに卑しい。 あらすじ・紹介 母校の男子高で教育実習を行うことになった広瀬は、自分の居場所はこの世界ではないような感傷を抱えている。広瀬が担当するクラスには、高里という孤立している不思議な生徒がいた。本人はごく大…

十角館の殺人/綾辻行人 一行の驚き、館シリーズのはじまり

何も知らずに、彼らはやって来る。何の疑いも恐れも抱かずに、自分たちを捕え裁く、その十角形の罠の中へ……。 あらすじ・紹介 K**大学推理小説研究会のメンバー7人が、十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を訪れる。事件のあった曰くつきの無人島で、春休み…

クマのあたりまえ/魚住直子 動物たちと考える「生きること」

まず、からだを休める場所をさがそうと思った。それから、食いものをさがしに行こう。 そうやって、死ぬまではたしかに生きよう。 あらすじ・紹介 不器用に生きる動物たちを主人公に、絵本のような優しい語り口で「生きること」を考えさせてくれる短編集。さ…

さがしもの/角田光代 読書という楽しみ

そうして私は、薄暗いパブの片隅で気づく。 かわっているのは本ではなくて、私自身なのだと。 版元ドットコム あらすじ・紹介 本にまつわる9つの物語を集めた短編集。 病床の祖母に1冊の本を探してほしいと頼まれた少女の日々を描く「さがしもの」、学生時代…

本ブログはじめます

読書が好きです。 たくさんの本との出会いを何らかの形にしてみたいと思いつくってみました。 ただ読んでるばっかりじゃなく、アウトプットもできるようになりたい。書きながら新しい発見があれば良いなと思います。 今までに読んだ本のことと、これから読ん…